東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)193号 判決
一 請求原因一、二の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、原告の主張する審決取消事由の存否について検討する。
1 本件意匠及び引用意匠の、意匠に係る物品及び意匠に係る形態が審決認定(請求原因二の項)のとおりであることは原告の自認するところである。
2 請求原因三の1の主張について
原告は、審決が、本件意匠と引用意匠との差異点の評価を誤つたとして、左記の点を指摘する。
(一) 灯体部のシエード下方の受け台の周縁形状
(二) 笠の周縁形状
(三) 笠の頂点の突起の形状
(四) 基台周胴面の形状
そこで、本件意匠と引用意匠とを比較すると前記原告の自認するところによれば、両者は、
(共通点)
(一) 意匠に係る物品が、ともに「池用瀘過機付き庭園灯」、「ウオータークリーナー」であり、
(二) 全体としての基本的な構成態様が、灯体部(シエード、受け台、笠によつて構成される。)、支柱部(支柱に吐出口を突設して構成される。)、基台部(濾過機を内蔵したもの)から成り、
(三) 構成各部の基本形状が、
(1) 灯体部では、シエードの周側面の形状を円筒状とし、その上方には周縁形状を円形とした扁平球面状の笠を設け、
(2) 支柱部では、周胴面の形状を細長円筒状とし、その中間部分に、先端を斜上向きの面となるように切截した円筒状の吐出口を水平状に設けてト字状に構成し、
(3) 基台部では、周胴面の形状を縦、横、高さの比がほぼ同率となる円柱状としている点において共通しており、さらに、
(四) 構成各部の具体的な構成態様においても、
(1) シエードの下方に受け台を設け、
(2) 笠の周縁に縁線を形成し、
(3) 笠の頂点に突起を設けている
点が共通しているものであることが明らかである。
(差異点)
このような共通点を有する両意匠について、原告は次の(一)ないし(四)の差異があると主張し、その事実は被告において明らかに争わないところである。すなわち、
(一) 灯体部のシエード下方の受け台の周縁形状
本件意匠では、下面側の稜線部分を内方に傾斜面状に切截しているのに対し、引用意匠では上面側の稜線部分を傾斜面状に切截したものとし、その傾斜面が外方へ突出している。
(二) 笠の周縁形状
本件意匠では、垂直状に切截して縁線を形成したものとしているのに対し、引用意匠では、外方に傾斜状に切截して縁線を形成したものとしている。
(三) 笠の頂点の突起の形状
本件意匠では、逆円錐台形状であるのに対し、引用意匠では扁平球面状である。
(四) 基台周胴面の形状
本件意匠では各側面からみて縦八箇、横一三箇の小円が全面を掩うばかりの密度をもつて配設されているのに対し、引用意匠では、横列約九箇の小点が五層をなしてほぼ等間隔に配列されている。
なお、成立に争いのない甲第六号証の二によれば、引用意匠の右小点は、同意匠に係る物品が「ウオータークリーナー」であり、この「点」に関連して水の流れを示すものと理解される二本の線及び二つの矢印が示されているところから、点状又は小円形状の透孔をあらわしているものと認められる。
(類否の判断)
以上の事実関係によれば、本件意匠と引用意匠とは、意匠に係る物品、意匠の全体としての基本的な構成態様、構成各部の基本形状を共通にしているものであり、構成各部の具体的構成態様においても共通点を有しているものであつて、前記(一)ないし(四)の差異点があることを十分考慮してもなお、意匠の全体としてみれば、その差異は、部分的な微差に過ぎないというのほかはなく、両者の類似性を否定する程のものとは認められない。
審決が両意匠の差異点の評価を誤つたという原告の主張は理由がない。
3 請求原因三の2の主張について
原告は、審決が本件意匠と引用意匠の差異点を看過したとして、シエードの形状及び灯体部の全体観察における差異の存在を指摘する。
しかしながら、成立に争いのない甲第一号証によれば、審決は、「本件登録意匠は、……全体としての構成態様を別紙第1目録に示すとおりとしたものであり、」「引用意匠は、……全体としての構成態様を別紙第2目録に示すとおりとしたものであつて」とし、本件意匠及び引用意匠の図面(別紙図面(一)、(二)(〔編註〕省略)に同じ。)を指示した上、「……本件登録意匠は、全体として引用意匠に類似するものである。」としているのであり、その別紙第1目録及び第2目録によれば、原告の指摘する右差異点も明白に図示されていることが認められるから、審決が右差異点を看過したとするのは当らない。
そして、本件意匠と引用意匠との間に右差異点の存することは被告において明らかに争わないところではあるが、両意匠は、前2の項に挙示したとおりの基本的及び具体的な共通点を有しているのであつて、全体としてみれば、右のような差異点があるとしても、それは部分的な微差といわざるをえず、両者の類似性を否定する程のものとは認められない。
この点についての原告の主張も理由がない。
原告が以上の主張を立証すべきものとして提出したその余の証拠を検討しても、いずれも、本件には適切でないなど、以上の判断を覆えすに足りない。
三 そうすれば、審決の取消を求める原告の主張はすべて理由がないので、本訴請求は失当として棄却することとする。